地名語源辞典 山中襄太著 校倉書房 1968年初版本(458ページ)
著者は多くの語源辞典を残した人です.この本は地名の由来を調べたもので,序論(辞典なのに序論が12ページもある)には,どうして地名が読みにくく,また如何にその由来を辿るのが困難であるかなどについて書いてあります.
一つ挙げれば,「奈良期の初め元明天皇の和銅6年に,地名はなるべく感じのよい字を使うように,そして一字・三字などの地名はみな二字にするようにとの朝廷の命令が出たので,地名を意味には関係なく,感じのよい字に改め,無理に二字にしたので,難しい読み方や当て字の地名が極めて多くなった.そういうわけで日本の地名は,命名の由来が複雑であり,文字の用法が無理なので,読み方・書き方もむつかしく,その意味・語源・来歴がわかりにくい.すなわち,むつかしい原因は主として漢字にある」と述べています.
また,地名は誤写・誤読などが起こりやすいとも言っており,これの例は
菊池 > 菊地
二荒(ふたら) > (にこう) > 日光
枚聞(ひらきき) > 開聞(ひらきき) > (かいもん) > 開門 > 海門
などがあるとのことです.(枚聞神社(ひらきき−)というのが鹿児島県指宿市にあり,後ろにそびえている山が開聞岳(かいもんだけ).またこの神社の別名が「おかいもんさま」.)
さらに,「書いてある字を読まなかったり,書いてない字を読んだりする場合があるのが,地名難解の一因である.」として,
「上毛野の毛を略して上野と書いて,読むときには略した字を読んで,書いてある野の字を読まないで,もとカミツケヌ(上毛野)と読んだのをカミツケ>カウツケ>コウヅケと読む」
こうした難解さの分析が,序論に10項目ほど並んでいて,ついでにもう一つ紹介すると,「逆語順の地名であることに気づかぬ点が,地名難解の一因である.逆語順とは修飾する語が,される語の後に来る語順で,たとえば,ヒ・シオ(干潮)というべきをシオ・ヒといったり,ホシ・ウメ(干梅)をウメ・ボシ,ナル・カミ(鳴神)をカミ・ナリ(雷)といったりする類.これは南方語に多い語順で(フランス語などもそうである),日本語に南方的要素が深く潜在している例証の一つとされている.地名の中にも,この逆語順のものがかなりある.たとえば天橋立は天立橋(あまのたてはし),横浜は浜横,横須賀は須賀横の意だという.こういう逆語順の地名であることに気づかないために,その地名の意味を解し得なかったり,誤解したりすることがしばしばある」
とのことです.ああ面白い.するてぇと六本木はギロッポンで良いような気になる.
著者は多くの語源辞典を残した人です.この本は地名の由来を調べたもので,序論(辞典なのに序論が12ページもある)には,どうして地名が読みにくく,また如何にその由来を辿るのが困難であるかなどについて書いてあります.
一つ挙げれば,「奈良期の初め元明天皇の和銅6年に,地名はなるべく感じのよい字を使うように,そして一字・三字などの地名はみな二字にするようにとの朝廷の命令が出たので,地名を意味には関係なく,感じのよい字に改め,無理に二字にしたので,難しい読み方や当て字の地名が極めて多くなった.そういうわけで日本の地名は,命名の由来が複雑であり,文字の用法が無理なので,読み方・書き方もむつかしく,その意味・語源・来歴がわかりにくい.すなわち,むつかしい原因は主として漢字にある」と述べています.
また,地名は誤写・誤読などが起こりやすいとも言っており,これの例は
菊池 > 菊地
二荒(ふたら) > (にこう) > 日光
枚聞(ひらきき) > 開聞(ひらきき) > (かいもん) > 開門 > 海門
などがあるとのことです.(枚聞神社(ひらきき−)というのが鹿児島県指宿市にあり,後ろにそびえている山が開聞岳(かいもんだけ).またこの神社の別名が「おかいもんさま」.)
さらに,「書いてある字を読まなかったり,書いてない字を読んだりする場合があるのが,地名難解の一因である.」として,
「上毛野の毛を略して上野と書いて,読むときには略した字を読んで,書いてある野の字を読まないで,もとカミツケヌ(上毛野)と読んだのをカミツケ>カウツケ>コウヅケと読む」
こうした難解さの分析が,序論に10項目ほど並んでいて,ついでにもう一つ紹介すると,「逆語順の地名であることに気づかぬ点が,地名難解の一因である.逆語順とは修飾する語が,される語の後に来る語順で,たとえば,ヒ・シオ(干潮)というべきをシオ・ヒといったり,ホシ・ウメ(干梅)をウメ・ボシ,ナル・カミ(鳴神)をカミ・ナリ(雷)といったりする類.これは南方語に多い語順で(フランス語などもそうである),日本語に南方的要素が深く潜在している例証の一つとされている.地名の中にも,この逆語順のものがかなりある.たとえば天橋立は天立橋(あまのたてはし),横浜は浜横,横須賀は須賀横の意だという.こういう逆語順の地名であることに気づかないために,その地名の意味を解し得なかったり,誤解したりすることがしばしばある」
とのことです.ああ面白い.するてぇと六本木はギロッポンで良いような気になる.